60代で30代と同じスタイル、ルックス、ダンス、歌唱力でパフォーマンスする彼を「化け物」という人もいる。
化け物ではない。人の何倍もストイックに生きることを支える「使命感」があるのだ。
「老い」を受け入れない生き方を選択した郷ひろみ。
その背景には「30代の郷ひろみ」であり続けなければならない「使命感」があった。
化け物ではない。人の何倍もストイックに生きることを支える「使命感」があるのだ。
その背景には「30代の郷ひろみ」であり続けなければならない「使命感」があった。
郷ひろみは「老い」ること自体を拒んでいる。言い方を変えればそれが彼の老い方だ。だから30代のルックス、スタイル、ダンス、声量を保つために、スポーツ選手並みのハードなトレーニングを60代になっても継続し、酒もたばこも断ち、食事時間も決めたストイックな生活を送っている。
それどころか彼は「23時間55分は郷ひろみ」だとして、本名の「原武裕実」を捨て、郷ひろみであることに一生を捧げているのだ。「郷ひろみであり続けること」が彼の「使命感」なのである。
その「使命感」は具体的には、自分を30年以上応援している50~60代のファンの前で、30代のままのルックスとスタイルで、動きの激しいダンスをし、大きな声量で歌い、コンサートの間だけでも、ファンに30年時間がさかのぼって10代、20代の自分に戻るという「イリュージョン」を提供する、ということだ。そのために架空の「郷ひろみ」で生きることを選んでいるのである。
郷ひろみの「使命感」と、そもそも「使命」とは?
「23時間55分郷ひろみでいること」を選ばせたものは?
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郷ひろみはなぜ「郷ひろみ」であることを選んだのか
郷ひろみは肉体的な衰えを感じ始めた40代の時に芸能活動を休止して3年間アメリカで暮らした。
恐らくその時に「自分はこれからどうあるべきか」を考え、ルックス、スタイル、ダンス、声量の4要素で30代の「郷ひろみ」を見せ続けファンに支持される、というあり方に絞り、ほかのものは捨てたのである。
「楽曲」もその1つだ。彼はステージの演出や衣装については細かいところまで非常にこだわる。しかし新曲に関しては「アップテンポのもの」程度しか指示を出さない。つまり彼は先の4要素と、「GOLDFINGER88」系の踊れる曲、「言えないよ」系のしっとりしたバラードの2パターンの曲だけでいいと割り切っているのである。だから彼のアルバムに収録されている曲は全体的に「古い」。インタビューでは「時代の先端を走る」と言いつつも、実際には「50~60代のファンが若い頃聞いた1980年代に流行った歌」を、手を変え品を変え2000年代になっても新曲として出しているのだ。そのアルバムももう10年以上リリースしていない。
つまり郷ひろみは「80年代の郷ひろみ」であろうとして、本当の60代の「原武裕実」を捨てているのである。それが彼の「目標」であり自分のファンを満足させる「使命感」の中心軸なのだ。 -
沢田研二は「老いることは美しい」と言った
10年ほど絶頂期はずれているが、沢田研二も郷ひろみと並び男性歌手のトップに君臨していた人物である。しかしその絶頂期の「勝手にしやがれ」でレコード大賞を獲った時でさえ、自分からは何の指示も出さなかった。当代一のクリエイターたちが寄っててかって沢田研二という最高の素材で自分たちの能力を競い、沢田研二は「されるがまま」に任せたのである。「勝手にしやがれ」のパナマ帽を投げる演出さえプロデューサーの加瀬邦彦の指示である。
その沢田研二が自分で考えるようになったのは、事務所を独立して自分で何もかもしなければならなくなった時からである。しかし人気には既に影が差していた。彼は10年近くの試行錯誤の末、「自分のありのままの姿を出すことが1番ファンに感動を与える」と気づき、「自分らしくあること」を自分の「使命」だと悟った。本来の彼の姿である内省的な曲を自分の作詞で出し、ステージでは歌謡曲の歌手ではなく、ローリングストーンズの曲や「憲法9条改正い反対する曲」を歌うロック歌手に徹した。
そして東日本大震の時にはほかの芸能人が1~2年でボランティアをやめるのを横目に、犠牲者を鎮魂するミニアルバムを毎年3月11日にリリースし、それを8年続けた。
そういう「自分の素でファンに感動を与えること」が彼の感じた「使命」なのである。だから風貌も、白髭、グレーの蓬髪、肥満といいうかつての「ジュリー」とは思えない姿で、ステージに立ち「老いることは美しい」と言った。それもまた彼の「使命感」から来ている必然なのである。 -
フランクルの「使命」論
ここまで「使命感」という言葉で述べて来たが、その元々の考えは、アウシュビッツから奇跡の生還を果たしたドイツの精神科医・フランクルのものである。
彼は「人はみんな自分の使命が生まれた時から用意されている。しかしなかなか人はそれに気づかない。しかし使命は気づいてもらえるのをじっと待っている」と述べている。
これは趣味を持て、外出しろ、地区のボランティアをしろというような表面的な「定年ノウハウ本」や、「こう考えて生きれば楽になる」というようなひとつの考えを押し付ける「定年説教本」とは全く異なる。そもそも定年後の虚しさや孤独は、何かをすることで解消されるものではなく、考え方を変える=認知を変えることによってしか解決しないのである。
たとえば郷ひろみが自分の「30代を維持してファンにイリュージョンを与える」という使命感は、40代で絶望的な気分になっていた時に「郷ひろみとはいったい何なのか」という思索からうまれたものだ。沢田研二の「自分の素を見せる」のも売れない10年間の試行錯誤の中で気づいたものである。
つまり「使命」に気づくのは何かのきっかけがあればいいのだ。本もその「きっかけ」の1つであれば十分に役立つ。
この「君はどう老いるか」という本も、そのきっかけの1つになるように、迷った末に使命にたどり着いた3人のノンフィクションを載せているだけで、これをしろとは一言も書いていない。気づくのは自分しかないからである。とは言え「気づき」を与えるという点ではこの本はかなり優れているので、定年後の孤独、喪失感、虚無感に苛まれる人にはぜひおすすめしたい1冊である。
少しでも自分の「老い」に関して忸怩とした思いを持っているならぜひ一読を!
Access
合同会社カウアンドキャット
住所 | 〒531-0061 大阪府大阪市北区長柄西1-3-22-2313 |
---|---|
電話番号 |
090-4301-0263 |
電話受付時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | なし |
業種 |
出版業 教育研修業 特定募集情報提供事業(51-募-000072) |
設立 |
2022年4月 |
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